東福寺龍眠庵墓地指定石材店のオフィス石太郎です。
墓石をご注文いただきますと、引き続き墓石に彫刻をする文字をお尋ねいたします。
文字が決まりましたら、紙に書かれた実寸大の文字を郵送させていただき、ご確認をいただいております。
本項では、墓石に彫刻する文字をテーマに書かせていただきました。
これから墓石の注文を検討しているお客様は参考にしてください。
和形墓石の場合
その他の文字について
墓石の一番上にある縦長の石を棹石(さおいし)といいます。
棹石には、家名や建立者、戒名などの埋葬されている方々の記録を彫刻します。
墓地に行くと「〇〇家之墓」と書かれたお墓を沢山見かけるのではないかと思います。
宗派によっては、「南無阿弥陀佛」「具會一處」「南無妙法蓮華経」などが彫刻されている墓石もあります。
文字の大きさには決まりがないため、石材店によって微妙に異なるのではないかと思います。
また、様々な字画の文字があるため、大きさを一律にすると、大きく見えたり小さく感じたりするようです。
以前に彫刻屋さんから、「田」は少しだけ小さくしているという話を聞いたことがありました。
最近は、墓石専用の文字ソフトが充実していますが、長年の経験により微妙に修正を加えている職人さんもいるようです。
白い紙に黒い文字の原稿を見た場合、墓石に彫刻されている文字よりも大きく感じることがあります。
青御影石の墓石では、濃いグレーに薄いグレーの文字になりますので、コントラストがはっきりした原稿と比べるとボケた感じに仕上がります。
理由はよくわかりませんが、京都型墓石の場合は、建立者を棹石の左側面に彫刻いたします。
その他の地域では、棹石の背面に彫刻するのが一般的です。
弊社の場合は、京都型墓石であっても背面への彫刻をおすすめしています。
おすすめしている理由については、戒名の彫刻と関連しますので次章で説明させていただきます。
多くの場合は、元号・年月・お墓を建てた人の名前などを彫刻しますが、西暦での彫刻も大丈夫です。
お墓を建てた人の名前ですが、物理的に彫刻可能な人数までの連名も可能です。
生前墓の場合は、夫婦連名での彫刻を希望する方もおられます。
連名での彫刻を希望されるお客様の多くは、兄弟や姉妹で両親のお墓を建てる場合です。
1~2度だけですが、「女性を建立者として彫刻するものではないと聞いたことがある」と、お客様に教えていただいたことがあります。
おそらく、その地域だけのローカルルールではないかと思います。
建立者を連名する場合は、一般的には同一世代と見なします。
「山田太郎 二郎 鈴木花子(実際は縦書き)」の場合は、長男・次男・長女と見なします。
年功序列に拘る人は、「山田太郎 鈴木花子 山田二郎」と彫刻しても構いません。
ただ、背面が文字だらけになるため、スッキリ仕上げるために苗字の違う人を固めて彫刻する場合が一般的です。
連名での彫刻は、同一世代と見なすと書きましたが、時々「子供の名前も一緒に入れてほしい」と希望する人がおられます。
建立者名とは、お墓を建てた人の名前ですので、本来は代表者だけでも良いように思いますが、少子化で家族の人数が少なくなった影響かも知れません。
お父さんが亡くなって、母娘での彫刻例としては「山田花子 長女幸子」などがあります。
娘さんの嫁ぎ先の苗字を彫刻することもできますが、一般的な習慣では「姉と妹の2人」でお墓を建てことになってしまいます。
また息子さんの場合も同様に「山田花子 長男太郎」と彫刻すると親子だとわかりやすく、墓石工事に携わる筆者としてもスッキリします。
真宗や浄土真宗では、墓石に彫刻する文字についての指針がありますが、墓石に彫刻する文字について全く決まりのない宗派も多くあります。
「ああしないといけない」「こうしないといけない」というお話の大半は、ローカルルールや個人の考えだと思います。
ご住職からの指導以外は、納得できる内容を参考にされればよいと思います。
墓石棹石の側面には、埋葬されている方々の記録を彫刻いたします。
土葬の時代や夫婦墓の場合などでは、棹石の正面に戒名を彫刻ケースもあります。
仏教徒の場合は、戒名(法名などの霊名)・俗名・死亡年月日・享年(行年)を彫刻するのが一般的です。
お爺さん、お婆さん、お父さん・・・と世代ごとに並べて彫刻する場合と、お亡くなりになった順番に彫刻する場合がありますが、どちらでも構いません。
埋葬者の彫刻は、子孫に伝えるという目的があります。
目的を優先する方には、お亡くなりになった年月日を無視して、世代ごとの彫刻をおすすめしています。
8寸墓石や9寸墓石など、棹石の横幅の違いで様々なサイズの墓石があります。
墓石のサイズによって彫刻可能な人数は異なりますが、8寸墓石の場合は4~5人までの彫刻が可能です。
先ほど、弊社ではお墓を建てた人を背面に彫刻することをおすすめしていると書きました。
埋葬者の記録を、棹石の右側面に彫刻いたしますが、右側面がいっぱいになった場合に、左側面に彫刻いたします。
京都型だけが、建立者を左側面に彫刻いたしますので、左側面に埋葬者記録を彫刻できないことになります。
京都型以外の8寸墓石では、現状のままで左右合わせて8~10名彫刻可能ですので、余裕ができることで安心していただけるのではないかと思います。
一般的には、墓石に家紋を彫刻いたします。
墓石に家紋を彫刻いたしますと豪華に見えますし、家紋を子孫に伝えることも目的の一つだと思います。
文字の打ち合わせの際に、「家紋が分からないので、今度お墓の写真を撮ってくるので、それまで待って」と仰るお客様もおられます。
地方によって墓石の形が違いますが、彫刻する位置については、正面の下側あたりが多いようです。
真宗・浄土真宗や浄土宗の寺院によっては、棹石の正面に「南無阿弥陀佛」を彫刻する指導があります。
家名を彫刻したいと希望の方の多くは、墓石の両側に建つ花立に彫刻をされています。
お墓の形によっては、横書きで上台(棹石の下の台)に彫刻する場合もあります。
本項では、一般的な和形墓石での彫刻についてまとめてみました。
最近は、デザイン墓石を希望するお客様も増えてまいりましたが、デザイン墓石の場合は一番最初に棹石正面の文字を決めることをおすすめいたします。
正面の文字は、お墓の形と並んでデザインに影響いたします。
文字数・縦書きまたは横書きなどを決めてから、墓石の縦横比を考えることが重要です。
墓石店の多くは、墓石の契約をしてから文字の打ち合わせをいたしますので、棹石の面積や縦横のバランスの制約の中で、文字を決めることになってしまいます。
3文字以上の縦書きの場合は、縦長の棹石の方が似合いますし、好みの文字+家名の場合も同様にバランスよく入るサイズの墓石にする必要があります。
入念に図面で打ち合わせをした場合でも、文字が彫刻された墓石を見て「思っていた感じと違う」とならないように、墓石に彫刻する文字を先に決めてください。